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覚書。
アムステルダムの街の、不思議。
街の一番古い骨格はダム広場から街路が扇状に広がるセントラル地区。
扇の中には繰り返しみられるパターンがある。
運河→歩道→緑→車道→歩道→建物→中庭(緑)→建物→歩道→車道→緑→歩道→運河
航空写真で見ると、さながら扇状にたたまれたサンドイッチのよう。
特にどれかが一番重要視されているということはなく、すべては等価に扱われている。
その結果生まれるのは、不思議に均質な都市のストラクチャー。
特筆すべきは、その空間体験である。
このレイヤーの中にいると、どこにいてもおなじような運河、木、歩道、車道を見ることになる。
だから、ときどき自分がどこにいるのかわからなくなる。
西に向かっていたとおもっていても気がつくと北に向かっていたり、ある通りを歩いているとおもっていたら実はもうひとつ隣の通りを歩いていた、なんてことが起こりうる。
地図を見ていても、「なんとなくここらへんにいる」ということはつかめても、通りの名前を確認しない限り正確にどこにいるかがつかめなくなる。
均質で、透明で、それゆえに迷路的な空間体験。
今たしかにここにいるけれども、同時に違う場所にも存在しているような気分。
こういう透明な迷路はパリのフランス国立図書館でかつて感じた感覚と似ていると思う。あの建物はあまりに均質すぎてぐるぐる図書館をまわっているとついには方角の感覚が失われる。
こういう均質で透明で迷路的な空間体験を面白いと感じるのは現代的感覚なのかもしれませんが、こういう街が「運河交通を基本とした高密で快適な都市をつくる」という単純明快なルールにのっとってつくられているという点が、もっともすばらしいことだと思います。