これから修士論文に関連して勉強したことを、すこしづつまとめてブログ上でアップしていきたいと思います。




最初なので、まず研究の概略を説明することにします。


今のところ直接の研究の対象はオランダ構造主義の建築家、アルド=ファン=アイクです。
ただし興味があるのは具体的な作品そのものではなく、物理的な建築・都市空間の構造(=下部構造)には社会的・文化的集団の構造(=上部構造)が見え隠れするという構造主義建築家の思想そのものにあります。
また、このような建築・都市空間に対する構造主義的視点に関する事柄を幅広く勉強していきたいとも考えています。


まず、構造主義そのものについての知識を準備するために、フランスの人類学者で構造主義の始祖レヴィ=ストロースの研究を参照しました。
そして彼の有名な親族構造分析や神話分析を通して、人間が織り成す集団にはその表面的な見かけとは別の次元に主体間の関係性つまり構造が存在し、主体そのものよりもその関係性に重要性を置くのが構造主義的な視点であることを確認しました。
また、構造主義は研究対象を構成要素に分解してその要素間の関係を整理統合することでその対象を理解しようとする点に特徴があること、そして研究対象が社会集団の場合はその分解された構成要素の最小単位は個々の人間そのものになるということを勉強しました。


次に、上部構造と下部構造が相補的に働きあうという構図を理解するためにマックス・ヴェーヴァーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を勉強しました。
上部構造である「プロテスタンティズムの倫理」が下部構造である資本主義というシステムの成立に大きな貢献をし、たまたま生まれたこの下部構造が上部構造とは切り離されたまま一人歩きしていって最後には上部構造を決定的に支配するに至ったというプロセスを勉強し、上部構造と下部構造はお互いに影響を与え合い相補的に機能するということを確認しました。


このようにして得られた知見を元に、「構造」概念を都市・建築空間に適用すると以下の2つの仮定を得ました。

①上部構造としての文化・社会的集団は下部構造としての物理的環境 ―都市・建築空間と木や道などのあらゆる物理的要素― のあり方の中に何らかの形で現れてくる。そしてそれは個々の建物を構成する建築的ボキャブラリーではなく、群としての空間の集合のあり方により強く現れる。
②文化・社会的集団の最小構成単位は個々の人間である。したがってその現れである物理的環境の最小構成単位は必然的にヒューマンスケールのものになる。
③文化的・社会的構造(上部構造)は物理的空間群(下部構造)としてたち現れてくる。そしてそうやって生み出された物理的空間は今度は文化的・社会的構造を不可避的にある程度まで規定することになる。



つづく....