東京から考える
東浩紀北田暁大
NHKブックス


「郊外化し均質化する東京」「多様性肯定というポストモダンの基本原理が逆説的に地域間の個性の差をなくす」という現象が、
「標準化と多様性」というテーマに関係あるような気がして手に取った本。
多様な人間のために都市(あるいは建築)が設計されると必然的にバリアフリー化・ユニバーサル化が求められ、結果的に、物理的にもそこに住む人間・利用する人間の分布的にも地域間の差異が少なくなってゆく。
またIT化による経済資本と文化資本の切断により、お金持ちもコンビニやドンキホーテジャスコを利用するし、貧乏人でも高度な文化資本を享受できるようになる。(ex.高価だった百科事典はもはやインターネット上で利用できる)
したがって人間のコミュニティのあり方は物理的な環境のあり方からより切り離され、空間の多様性とはもはやそこを利用する人間の多様性を表現するものではなくなっている。


では現代では、空間の多様性の根拠になりうるのは一体何なのか?が、自分にのこされた課題。


以下、簡単な要約


1971年生まれ、東京郊外育ち、東大で現代思想の勉強をした哲学者と社会学者が、東京について考える本。


第I章:
東京は複数の小都市が集まったモザイク型地域
リアルなレベル(身体的な居住地)とヴァーチャルなレベル(匿名的な都市への強い帰属心)での地元意識の分裂(東氏の実感)


第II章:
3つの郊外
国道16号的な郊外
 自動車移動を前提とした、人間の動物性に訴えるファスト風土的・ジャスコ的均質空間(動物性:根源的欲求のままに快楽を求める人間の本性を示す言葉・東氏による造語)
中流階級の夢の生活テーマパークとしての古典的郊外
 階層と生活様式の共有
・広告郊外
 風俗の囲い込みによるイメージの規範的体現、シミュラークル化された空間

繁華街の脱舞台化・情報アーカイヴ化


第III章:
IT化による経済資本と文化資本の切断=格差の不可視化、それらと土地との結びつきの崩壊


第IV章:
多様な人間集団が安全に(バリアフリー、セキュリティ)暮らせる町づくりの自発的追求が、街の個性を奪うという逆説(面白さとダイナミズムと持続可能性とのズレ)
都心内郊外と職能集団の街への風景の分裂


第V章:
ジャスコ化・動物化の進展の中で、脱構築不可能な要素としての生殖の意義がかえって顕在化し、それを基盤にしてナショナリズムが生まれる危険性
東氏は人間工学と身体に可能性を見出すのに対し、北田氏は人間工学の共同幻想性に注目し、より権利論的に行動する必要性を説く
宮台真司三浦展森川嘉一郎への批判