有名なフットボール・チーム、アヤックスの本拠地アムステルダム・アレナのすぐ東に位置する
アムステルダムの輝く都市、Bijlmerバイルミーア。



10万人もの人口を収容する集合住宅として計画されたこの団地は、1968年に建設がスタートし1975年に完成。
当初若い中流階級の家族をターゲットとして計画されたが彼らの興味を惹くことはできず、
かわりに低所得の移民(オランダの元植民地スリナムからの移民がほとんど)が流れ込んで、見事にスラム化した。
今でも実際に訪れてみると黒人ばかりが歩いている。(ちなみにオランダのヒップホップ・シーンではこのスラム出身の黒人ラッパーは高く評価されている、とのこと。)


失敗の原因は二つあるといわれている。
一つ目はモビリティの弱さ(ロケーションの悪さ)。アムステルダムの中心からかなり遠く、不便。
メトロの駅があって東京的な感覚からするとアクセスはよいという印象をもつものの、自転車通勤が主体のアムステルダムではそうでもないようだ。
二つ目は、オランダ人は地面に接した住宅に住みたいという願望を強くもっているということ。高層住宅はオランダ人にはうけなかった。結果、南米からの移民が住み着くことになった。


現在ではこのスラム街を改善すべく高層住宅の取り壊し・中層中密の比較的高級な集合住宅の建設が進行中。


今日、実際にここを訪れてみた。
貧乏くさい密度感が不快な空間を作り上げている、というのが最初の印象。
でも密度が高すぎるというわけではない。
たとえば、

これくらいのスケールで見ると、設定された密度はそんな悪くない。
でも、

これくらいのスケールで見ると、密度の分布が極端すぎる。(建物は10から20層の高さ)


スケールと密度の問題は切りはなして考えても意味がない。
密度は、扱うスケールに応じて持つ意味を変える。
どんなに近代的で機能の分離された都市も大きいスケールで見ればかなり機能が混合した都市に見える。
適切な密度は、適切なスケールに応じてこまかに設定される必要がある。はず。
都市的な考察からスタートし、最終的には建築スケールでの適切な密度がどうなるのか、が気になる。


密度/境界
という興味のあるキーワードのうちの、密度に関する考察。
(境界は、もっと建築内部からの要求が支配的に作用する要素)


極大スケールから極小スケールまでを一直線に見通すことのできる視点が、ほしい。