騒がしい夜。


土曜日午後6時ころ、同僚のポルトガル人、アンドレから電話。
まえもって飲むことを約束していたこの日は、どうやら「ミュージアム・ナイト」というイベントの日だったらしい。
チケットを買うと深夜までアムステルダム中40箇所の美術館が入り放題とのこと。
まあしかしお互い興味は美術館じゃなくて酒にあり。とりあえずレイツェ広場の近くの映画館のバーでのもうということになる。


到着すると、予想外の事態に遭遇。
彼の仲間のポルトガル人―スペイン人がいっぱいいて飲んでいた。てっきりサシで飲むのかと思ってた。
でも悪くない。そのグループに混ざって飲み始める。


ここでアンドレと仕事や同僚やこの先のことについて話す。
同い年で一見もの静かに見える彼もうちには熱いものを秘めている。
そりゃ、この歳で外国で働いてるようなやつなんだから当たり前だよな。


『経験』。この言葉がほかの何よりも価値を持つと信じているお年頃。


外国で生活してると一日に一度は見たことのないものを見る。
こういう飲み会に参加すると一回で10個くらい知らなかった知識を得る。


なんでアムステルダムにこんなにいっぱい彼の同郷の仲間がいっぱいいるのかというと、
どうやらポルトガル―スペインからきた建築の学生/インターン/社会人だけでできたコミュニティがあるらしい。
でも人間の入れ替わりが激しいらしく、アンドレでも名前がわからないような人も何人かいたみたいだ。
こういうコミュニティがあるともう異国にいるなんて感覚にはならないんだろうなあ。


こういう若い人たちのコミュニティの日本人版はパリくらいになるとあるけどアムスにはない。
しかしその分日本人があまりいないからなにもしなくても自分のキャラが立つのは楽でいい。
彼らの仲間に加わっているオランダ人の心理学の専門家の女の子が僕に向かってこういう。
「一人で日本から来てこんな遠い国で働くなんて、なんて勇気なの!」
そりゃまあ、その分苦労してますけど。


一通り飲んだ後、みんなで写真美術館に移動することに。
自転車で移動するときに、アンドレの親友がリスボン工科大学(AUSMIPの4大学のうちのひとつ)出身であることが判明。
彼はAUSMIPに応募して落選したんだとか。みんな、やたら日本に、というか東京に興味を持っている。
「東京で生活するのはすごくキツイとかきくけど、どうなの?」
「東京に比べたらアムスなんて小さな村なんでしょ」
とか。
やっぱり世界における東京のキャラをもっと住人たちは自覚したほうがいい。


次は晩御飯を食べるためにレンブラント広場へ移動。ピザを食べる。
ここで隣に座ったフランス人の女の子、クレアがパリのラヴィレット校(AUSMIPの4大学のうちのひとつ)出身で現在アムスでインターンしていることが判明。
僕が去年パリで知り合った日本人の友達と彼女はワークショップでいっしょに作業したらしい。
しかも彼女は東大の本郷キャンパスに来たこともあるらしい。世界は狭い。


ここで僕が日本に帰る前にポルトガルに旅行することを伝えると、アンドレの姉が経営しているというスシバーに行くよう強く勧められる。
リスボンのAUSMIP学生たちと行ってみようかな。
しかもなぜか話の流れでこんどパーティでスシをつくることになった。作り方、勉強せねば。


その後、レンゾ・ピアノ設計のNEMOへ。カフェはダンスクラブに変わっているし、屋上ではみんな飲んでる。
こういうイベントを企画して美術館や博物館を真夜中に開放することは日本ではまず考えない。
展示に興味はなくともとりあえず来て、とりあえず踊って、とりあえず飲む。
さすがは生活を楽しむことをよく訓練されているヨーロッパ人。


死ぬほど人がいる(とは行っても渋谷ほどじゃないけども)ので早々に退散して近くの美術館&クラブへ。
ところがここも人でいっぱい。行き先を変更して、地元ではナイスなバーが集まっていることで有名なパイプ地区へ。
さすがにコミュニティをもっているだけあって彼らに蓄積されてるアムス情報は半端ではない。
ここのバーがいいとかあっちにもいいのがあるとかいろいろ教えてもらう。一般の生活レベルで知らないことが、まだまだいっぱいある。


ここまでくるとさすがに夜も遅いのでグループも4,5人になっていた。ちょっと腰を落ち着けてビールを二杯飲んだ後、家へ帰ることに。
(しかしクレアは颯爽とゲイバーに繰り出して行った)
早朝3時に帰宅。
長い長い、疲れたけど完璧なウィークエンドの一日。


やはりヨーロッパ的な生活の楽しみ方も知るべきだ。仕事(建築)ばっか考えてるやつって、こういう人たちからみたら気持ち悪いにちがいない。
まじめにひとつのことだけやり続けるのも、考えものかも。