陰翳礼讃
中央公論社
谷崎 潤一郎


この文章は、昭和八年当時、すでにグローバル化アメリカ化)によって変化するライフスタイルへの反発が起こっていた、ということを示しています。
今の僕たちは、このとき著者が批判した欧米化されたライフスタイルよりもさらにもっともっと欧米化されている。だから、今読むとこの文章は単なる懐古趣味として解釈することもできてしまいます。
実際には単なる懐古趣味とは違うのだろうけれども、それは自分的にはあまり問題ではありません。
自分の立場にひきよせて考えた場合の興味は、いかに今の自分が当たり前だとおもっているライフスタイルが日本の古来の伝統的なそれから離れ、
欧米的なそれに染まってしまっているのかとういう点にあります。
それは価値観や文化にまで深く浸透している。
わかっていたつもりでも、わかっていなかった。

それにいまさら回帰せよというのではなくて、それを意識して今を生きることは重要なことだと思いました。
そしてもし古来の日本の価値観をよしとするならば、それは現代的な考え方や感覚によって再解釈されないといけないはずだとも思いました。

深沢直人さんや原研哉さんのやろうとしていることは、そういうことなんじゃないかと思っています。