前期の総括

今日は同居人の二人は小旅行へ行っているのでパソコンがあいているこの時間を利用して
前半の総括をします。
普段はなかなかブログのために長い時間はとれないので。


留学開始当初、目標に掲げていたものは以下の3つ。


・学校の課題
・パリのコンペ
・旅−できるだけ建築をみる


これに加えて人との出会いが前期の主な収穫だったな、と思う。



到着初日にパソコンの盗難にあったことは最初はもちろん大変だったけれど、
パソコンがなくなったことで逆によく手が動くようになったのはよかった。
手で図面を描き、模型を作って黙々とスタディを積み重ねているうちに、2年時の住宅課題を設計していたころをよく思い出していた。
そういえば、あの時も手で描いた図面を書いては模型を作りまた図面を直すということを飽きずに繰り返していたな、と。
あるとき安藤忠雄さんが製図室に現れて、「時が経つにつれて情熱は薄くなっていくもの。でも今のこのわけのわからない情熱を院生になっても忘れてはならない。」
と言っていたことも思い出していた。


ただ初心にかえって自由に設計を楽しめた反面、ほとんど誰からもアドバイスを受けずに(外部空間のシークエンスについてはたくさんアドバイスはあったけど)設計を進めていくことに対しての不安もかなり大きかった。
院生に当然要求されるレベルのリアリティがこの案に果たしてあるのか、と。
もちろんたまに同居人に「ここどう思う?」と聞くことはあったけれど、
先生たちのアドバイスを受けながらスタディを進めていっていた日本にいたころとはだいぶ勝手がちがう。
自分ひとりの力ではたいしたものはできないということは学部生時代に痛感済み。

でもだからこそ、納得いくまで案を詰めようとすることで、その不安をなんとか取り払おうとした。
その姿勢自体は学部生時代からは変わっていない。



学校の課題に関して。
外部空間やファサードのマテリアルの話しか教官は興味がなかったけど、そこまで徹底してパブリックな空間から建築を考えようとする姿勢自体は面白かった。
建物自体はもちろんその持ち主のもの、でもファサードや街並みを構成するものは’みんなのもの’と言う考え方はヨーロッパならではなんだろうな、と思った。
いつもは断面と平面の面白さのみ考えてきたけれど、立面の質をここまで問われたのは初めて。
立面を考えているうちに必然的にディテールへ興味が移っていった。
ファサードを重要視するならそのディテールまで教えてくれればすごく面白いのに、と不満に思いつつも一人でディテールの雑誌を読んでトレースしたりしてみた。
きっとこのディテールには自分にはわからない嘘があるんだろうなと不安に思いつつも、やらないよりはずっとましだ、と自分を鼓舞しながら。



パリのコンペに関しては目下製作中。
ただ、提出自体はずっと先(6月くらい)なのでモチベーションの保ち方が難しい。
直前にならないと気合が入らないのは悪い癖。



旅行に関して。
実際に訪れてみたら思いがけない感動があったり、ミースやコルビュジェはほんとにすごいんだなあということを実感できたり、収穫はいっぱいあった。
建築はやっぱり楽しいんだと思えた。いい建築を見るたびに何か初心に帰ったような気分になれた。

なかでも最大の収穫は吉良さんに会えたことだと思う。
実際にリノベーションの現場を見させてもらって、自分はこういうリノベーションのプロジェクトのディテールをぜひ学びたいと思った。
吉良さんの事務所はそういうことを学ぶのには絶好の環境。
半年という短い期間の中でも、まだ見えない何かをきちんと学んで帰りたい。



いろんな人たちとの出会いに関して。
ベルギーの建築家・三木さんに会えたことをはじめ、そこから日本人のつながりで思いがけない方向に人脈が広がっていったのはやっぱり大きな収穫。
日本にかえってからも大事にしたい。

特に三木さんの仕事のお手伝いをした経験はかけがえのないもの。
実際にクライアントたちの意見を調整したりする現場に立ち合わせてもらったりして、
直に人間に接する建築家という職業はなかなか面白いぞ、ということを再確認。



とまあ、大雑把だけど前期に関してはこんなところ。
後期に入って多分ブログを更新する機会がほとんどなくなると思うので、
後期の予定などいまわかる程度で書いておくことにします。



後期はミュンヘンに2月16日に到着。
その後ミュンヘンのこみやま&かいと会っていろいろ話をしたい(もちろんビール片手に。)

その後23日ころから長期旅行を計画中。
フランクフルトから南仏に飛んで同居人Fと合流し、ニームマルセイユ→リヨン→バーゼルルツェルンチューリヒミュンヘンプラハ→ブルノ→ウィーンと、ヨーロッパ横断計画。
予算はぎりぎり。でもみたいものがありすぎるので仕方ない。飢えてでも行きたい。


その旅行以外はTUMのパソコンルームをつかってブリュッセルのプロジェクトの平面図のCAD化と、ディテールの図面を雑誌などみながら必死に考える予定。自分の中で、まだブリュッセルのプロジェクトは終わっていない。
ひとりよがりであるかも知れない以上、納得いくまで詰めていって突き抜けた案にするしかない。