低迷・成熟・持続
ブリュッセルは不思議な街です。
インナーシティには白人よりも黒人やアラブ人がたくさんいて
空き家、空きテナントもいたるところに発生していて床があまっていて
建設中のまま放置されている場所がいくつもあって
道端には信じられないくらい犬のフンがたくさん落ちていて
廃れている雰囲気で満ち溢れているというのに
不思議と街全体としてうまくいっている、そんな街です。
どこか中国と似たものを感じます。
というか社会主義の雰囲気を感じます。
特に平日に頑張って仕事しているわけでもないのに土日はきっちり仕事を休むし
平日だって午後6時頃を過ぎれば店はほとんど閉まるし
メトロやトラムだってお金払わなくても乗れるし(見つかると罰金だけどほとんどつかまらない)
ソーシャリストが大挙して出てきて年金問題について抗議ストライキをしてるし
そういえばベルギーは社会福祉が充実していて国民の老後の生活はかなり保証されていると聞きます。
つまり、西側の国だったとはいえ、国民の生活に対する政府の役割が大きいやや社会主義寄りの国なのかも知れません。
ベルギーといえばギルドなど民間の力で出来上がった国で
フランス(ナポレオン)の侵攻にもめげず
ケルンやパリの交通の要衝として栄えてきた国で
古きよきヨーロッパの典型みたいなイメージを抱きがちですが
現在のブリュッセルはそのイメージとはだいぶ離れています。
きっとコンゴはじめ多くの移民が入ってきてから雰囲気が変わったんだと思います。
アントワープやブルージュなど地方都市はまだ古い面影を残しているようですが。
とにかくブリュッセルは、一見して廃れてるように見える、だけどなぜだかうまくいっている不思議な街です。
それどころか、サステイナブルということに関していえば、東京よりもずっとサステイナブルな都市です。
建物はどれもこれも古いものばかりで、たとえ中身(ソフト)は変わっても建物(ハード)は変わらない。
したがって町並みもほとんど変わることがない。
これは、サステイナブルな建築・都市の一つの形であるということができます。
きっと、もうずっと長いこと不況の中にあった国なんじゃないかと思います。
日本は不況不況だと騒いでいるけれどそれもここ十年くらいの話。
ベルギーは下手したら100年くらい不況の中にあったんじゃないか?
不況というと悪いイメージしかないけれど、経済的低迷というものは実は成熟した国へと至る過程の最初の段階であり、
ベルギーはそれをだいぶ前に経験してしまった国なのではないか?
とすれば、日本もいつかは今のベルギーみたいになるのか?
まったくありえないとは言い切れない気がします。
都市空間の持続再生というテーマと照らし合わせてみたとき、日本のこれからを考えるためには
やはりヨーロッパの都市に学ぶことは大きいような気がしている今日この頃です。