建築家に頼む?



なぜ人は建築家に設計を依頼するのか?
設計事務所で日常の業務に勤しんでいると、事務所の仕事を責任もって完遂すべく日々奮闘することに身も心も捧げてしまうためなかなか考えることがないのだけれど、今日はこれがふと気になった。


目立ちたがりの人がやっぱ特別なものが欲しいとか、集合住宅でデザイナー物件としての付加価値がほしいとか、あるいは設計条件が難しくて設計がうまくないと納められないとかいろいろありそうだけど、やっぱり一番は、自分の周りの環境に自分で手を加えることを楽しめる人が建築家に頼むんじゃないだろうか。


それは必ずしもそんなに大袈裟なことじゃなくて、
例えばガーデニングが好きでいろいろ楽しみたいと思うだけでも、賃貸だと日当たり悪いとか灌水システム無いとかマンションの管理規約上出来ないとかいろいろ条件が重なり合って難しかったりするし、そもそも本格的なガーデニングにちょうどいいサイズのバルコニーってなかなか無かったりする。
例えば和風が好きな人が壁を漆喰塗りにしたかったりしても今の賃貸じゃ普通はそれは出来なかったりする。
だから、そういうちょっとした好みに合わせた、ちょっとだけ気の利いた(そのほかのほとんどの部分はシンプルな)空間を欲しがる人は割に多いんじゃないだろうか。顕在化してないだけで。


あと一戸建ての家の場合に、一見あり得なさそうだけど実はあり得るのは、お金はかけられないんだけど自分好みの家が欲しい人。少ない予算だと普通はハウスメーカーの家くらいしか建てられないんだけど、それだと完全に画一化されてる。建築家に頼む場合は低予算であることをあらかじめ最初に言っておけばその範囲で当然なんとかしようとするし、全部オーダーメイドだから割に細やかな要望に対して気を配った柔軟な設計をしてもらえる。(低い建設費で納めるためには普通より労力がかかったりするのが普通だから、設計する側からするとたいへんだけど。普通は設計料は建設費の何パーセント、といった具合に割合で決まっているので建設費低いほど報酬が少なく、かかる労力は大きい。)


だいたい、優れた建築家やデザイナーというのは、施主や共同設計者とか他者とのやり取りの中から「これしかない!」っていう落としどころを探しあてることのプロなので、「同じものを大量生産する」ことよりも「少ない数しか必要のないものをたくさんつくる」必要のある今の時代にはわりと必要な職能なんじゃないでしょうか。だから建築家に頼む人もいるんじゃないかと。